「ったく、財布忘れたらコーラ買ってきて貰えねぇじゃねぇか」


いや、聞いてないし。


「それって遠回しに買って来いって言ってるよね」


財布を受け取りながら冷ややかな視線を送ると、


「よろしく!」


さも当然のように手を上げられた。


にやりとタチ悪そうに浮かべる笑みにげんなり。



「あ、」


富士山復活してる。


「フフン、俺様にかかりゃすぐ元通りよ!」


あたしの視線に気付いたのか、得意気な表情でふんぞり返る筋肉馬鹿。


どこが直ぐにだよ。

時間掛かりまくってたじゃん。


口に出して言うと後々絡むのが面倒臭いから心の中で留めておく。



「優音、行こ」


嵐ちゃんを無視し、優音に声を掛けると、


「優音はお前のアッシーかよ」


嵐ちゃんがお気の毒様とでも言いたげに鼻を鳴らした。


「優音はそれを喜んでるのよ!」


グッと親指を立ててそう言うと、


「アホか!俺をドMみたいに言うんじゃねぇよ!」


頭にゴンッと優音くんのゲンコツが。



「……痛い。殴んなくてもいいじゃん……」


強烈なゲンコツに頭を押さえ、優音を恨みがましく睨み付ける。




「ねぇねぇ、お二人さん。11時まであと10分しかないよ~?」


「えっ!?」


頭上から聞こえた声に顔を上げると、二階廊下から時人くんがあたし達を見下ろしていて。


……っていうか10分前!?


「ヤベッ、凛音行くぞ!!」


「ヤバイヤバイヤバイ!時人くん、教えてくれてありがと!」


靴を履いた優音が先に玄関から出ていく。


続いて出て行こうとすると、


「コーラよろしく~」


背後から能天気な声が聞こえてきた。


その声に「はいはい」と適当に返事をして玄関から飛び出す。


バイクが置いてあるガレージまでダッシュで走ると、エンジンをかけて準備万端の優音があたしにヘルメットを被せた。


そして、ひょいと持ち上げ、バイクに乗せてくれる。


出発の準備が出来たところで、「レッツゴー!」と掛け声を掛けていざ発進。