「お前、まだ行かねぇの?」


「……っ、ギャァァァァァァァ!!」



横向きで寝転がっていたあたしの上に突然現れた富士山。


気配なく現れたその富士山に、驚きのあまり横向きのまま壁に向かってゴロゴロと回転する。


壁にぶち当たったあたしは、さっきの位置から一寸も動いていない富士山……じゃなくて嵐ちゃんをビシッと指差して叫んだ。



「い、いきなり現れないでよ!ビックリするじゃん!!」


「……お前、驚いただけでそこまで回転すんのも凄いぞ」



って、話しを聞けーー!!


ヒューと呑気に口笛を鳴らしている嵐ちゃんに殺意が芽生える。



「っていうか、何で此処に居んの!?」


「遊びに来たから」



そんな事分かってるっつーの!!



「そうじゃなくて!あたし今日居ないって言ったじゃん!」


「あ?あぁ~、言ってたっけな。まぁ、直ぐ帰って来るんだろ?」



ニヤリと怪しい笑みを浮かべながら、体勢を変えてベッドに座る嵐ちゃん。



「ハッ。どうせ、妃奈目当てで来たんでしょ?」


「よく分かってんじゃねぇか」



やっぱり。そんな事だろうと思ったよ。



「嵐ちゃんに見せたら妃奈が汚れるし」


「あぁ?そんな事言うのはこの口か?」


「痛いっ!ちょっとやめてよ!」



人の顔をゴムみたいに思いっきり引っ張る嵐ちゃんに思いっきりパンチを食らわせる。


けど、嵐ちゃんの鋼鉄とも言える硬い身体はビクともせず、あたしの拳だけがダメージを受けた。


無駄に割れてる腹筋が憎い!!