「………」


広げられた両手に躊躇っていると、後ろからトンッと背中を軽く押されて、自分の意思とは関係なく身体が前へと倒れていった。



「……我慢しなくていい。泣け」



温もりを感じたのと同時に強く抱き締められて、泣きそうになるのをグッと我慢する。



「でも……」



色んな感情が胸中で絡まって、素直に頷けない。



「いいから」


その一言に、胸中で渦巻いていた想いが一気に吹き飛んだ。



「……ふっ……うぅ……」



強く抱き締めてくれる貴兄の両腕に感情が溢れ出して止まらない。



「……っ……ぅ……」



とめどなく溢れる涙と嗚咽。



「もっと泣いていい。我慢するな」



それに拍車をかける様に優しい言葉が掛けられて、あたしは子供の様に強くしがみついて泣いた。




貴兄、優音、ありがとう。


嫌な想いさせてごめんね。



今だけ。


今だけでいいから泣かせて。



これで最後にするから。















あたしが鳳皇に別れを告げてた時、貴兄と優音が後ろを振り返っていたなんて知らなかった。


そして、去っていくあたし達を十夜達が見ていたなんて知らなかった。