ここまで何とか我慢していた涙が限界を迎えていた。
スッと顔を伏せ、右手の甲で涙を拭う。
皆の前で涙を零流す訳にはいかない。
声に出して泣きたいぐらいツラいけど、今は泣かない。
泣きたくない。
最後に映るあたしの姿が泣き顔なんて嫌だから。
「──彼方」
再び顔を上げて彼方に視線を向ける。
目が合った彼方は今までで一番哀しい顔をしていた。
眼鏡の奥で焦げ茶色の瞳がゆらりと揺れる。
「……彼方。彼方はお馬鹿で変態だったけど、いつも優しくしてくれた。勉強、教えてくれてありがとう」
「……っ、りっちゃん……」
哀しみを帯びていく彼方の表情を見ていられなくて、背けるように壱さんへと視線を移す。
「……壱さん。今まで送り迎えしてくれてありがとう。あたし、壱さんの優しい笑顔が大好きだった。約束、守れなくてごめんなさい」
「凛音ちゃん……」
……壱さん、ごめんね。十夜の彼女なれなかったよ……。
応援してくれたのに、ごめんなさい。


