……っ、駄目だ。
これ以上十夜の顔を見ていられない。
その瞳に耐えられる程あたしは強くない。
今にも零れ落ちそうな涙をこれ以上我慢する事なんて出来なかった。
十夜の傍にはもういられない。
だから──
「……貴兄、もう、いいよ」
お別れしよう。
「凛音……」
貴兄の困惑混じりの声を耳に捉えながら、力が抜けきった足を一歩前へと踏み出す。
自分から十夜達の元へ向かうのはこれが最後。
それを噛み締めるように数歩、ゆっくりと前へ出る。
本当はこの場から今すぐ逃げ出したい。
十夜の前から逃げ出したい。
けど、此処まで来てくれた皆に伝える事は全て伝えると、さっき自分にそう誓った。
だから、いくら苦しくても、いくらツラくても、伝えなきゃいけない。
“ありがとう”って伝えなきゃいけない。
さっきより少しだけ近付いた皆との距離。
心の距離は縮まっていないけど、感謝の気持ちは少しでも近くで伝えたい。
例え今、あたしを見る皆の顔が戸惑いで溢れていても。
「皆……今まで獅鷹の事黙っててごめんなさい。此処まで来てくれたのに、一緒に行けなくてごめんなさい。
来てくれて、嬉しかった。けど、あたしは皆と一緒には行けない。
ごめんなさい。本当にごめんなさい……」
一人一人の顔を見ながら、心を込めて謝罪の言葉を告げる。
あたしの口から改めて出た謝罪の言葉に、キュッと眉間にシワを寄せる四人。
それを視界に入れながら続ける。
「最初は、面倒な事に巻き込まれて早く抜けたいと思った。
けど、いつの間にかみんなと一緒にいる事が楽しくなってて、ずっと鳳皇に居たいと思うようになった。
毎日が楽しかった。喧嘩も沢山したけど、それでも楽しかった。皆と一緒に居る事が幸せだった。
毎日のくだらない会話も、送り迎えの車内も、ゲーセンで遊んだ事も、勉強会をした事も、お泊まりした事も、お祭りに行った事も、暴走に連れていって貰った事も、全部が楽しかった。嬉しかった。
……ありがとう。あたしと毎日一緒に居てくれてありがとう。
あたしを、仲間にしてくれてありがとう」
「……っ…」
「楽しかったこの半年間、絶対に忘れない」


