「なんで、そこまでする?」
その言葉はあたしではなく貴兄へ向けられていた。
さっきの煌とは一変し、険しい表情で貴兄を見据えている。
その瞳から放たれる光りが、煌の心情を表しているような気がして胸が苦しくなった。
「お前は分からないのか?何故、俺が凛音をお前等の元へ行かせないのか」
「あぁ゙?」
貴兄の意味ありげな言葉に、より一層表情を険しくする煌。
「俺は凛音に哀しい想いをして欲しくない。お前等と一緒に居ると苦しむかもしれないんだ。
それが“どういう意味”か分かるか?」
「………っ」
「お前等の為にも、凛音の為にも、離れるのが一番いいんだよ」
「…………」
貴兄と言ってる意味を理解したのか、煌は険しい表情を浮かべたまま何も発しようとはしなかった。
ただ、沈黙だけが静かに過ぎていく。
「桐谷もそう思っているから何も言わないんだろう?」
耳に飛び込んできた“桐谷”という言葉に、今まで視界に捉えながらも直視していなかった十夜へと視線を移した。
けど、見てしまった事を直ぐに後悔した。
十夜は怒りで顔を歪めている訳ではない。
眉を寄せて哀しんでいる訳でもない。
そんなハッキリとした表情の変化なんて、無い。
何も無いんだ。
焦点が定まっていない漆黒の瞳が全て物語っているような気がした。
十夜はあたしを拒絶をしてる。


