「……だからりっちゃん、“あの時”泣いてたのか?」
目が合った彼方の瞳がユラユラと哀しげに揺れる。
「……うん」
流石彼方、よく覚えてるね。
そう。
あの時あたしは十夜の言葉が嬉しくて泣いていた。
『離れるな』という言葉が嬉しくて。
『仲間だ』って言ってくれたのが嬉しくて。
「あたしは、皆から離れたくないと思った。ずっと一緒に居たいと思った。
いつか後悔すると分かっていたのに、それでも皆と一緒に居たかった……」
十夜の言葉で、揺らがないと思っていた決心がいとも簡単に折れて、あたしの心は“皆と一緒に居たい”という気持ちで一杯になった。
後先の事なんて一切考えず、ただ、一緒に居たいという気持ちだけが心を占めていた。
「凛音ちゃん……」
「自分の気持ちばかりを優先して皆の気持ちなんて全然考えてなかったの。
黙っている事を申し訳ないと思いながらも、皆と離れたくないという一心で貴兄の事を隠し通した」
「……」
「夏祭りで睨み合ってる姿を見ても、あたしは自分の気持ちを優先した」
「……っ、お前、あれを見てたのか!?」
あたしの言葉に過剰に反応した煌が、声を荒らげて足を一歩前へ踏み出す。
「……うん。一部始終見てた。でも、それでもあたしは皆に真実を告げようとは思わなかった」
ツラい事があるかもしれないと覚悟していたから。
どんなにツラくても一緒に居たいと思ったから。
今思えば、本当に自分の事しか考えていなかったんだなって思う。
あの時離れていればこんなにも皆を傷付けずに済んだのに。
こんな別れ方をする事はなかったのに。


