直ぐに体勢を立て直して顔を上げると、飛び込んできたのは二人の喧嘩している姿で。
「煌!貴!やめて!!」
二人に向かって何度も叫ぶけど、二人とも止めてくれない。
やだ。やだよ。
喧嘩して欲しくないのに、なんで……!
「凛音」
どうやって止めようかと考えていた時、不意に名前を呼ばれて振り向いた。
視線の先にはあたしを真っ直ぐ見つめる十夜が居て。
その漆黒の瞳は揺らぐ事なくあたしを捉え、ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。
……あぁ、そういう事なのか。
十夜の姿を見て分かってしまった。
あたしがしなければいけない事を。
「そう、だよね……」
あたしが決意をしない限り、“これ”がずっと繰り返されるんだ。
ううん。あたしが言わないから繰り返される。
去れば、追われる。
それは、あたしが“兄妹”と言わない限りずっと続いて行くんだ。
その事に気付いた時、さっきまで言えないと思っていた気持ちが嘘の様に消え失せた。
そうだよ。
あたしが言えば全て終わる。
貴兄と十夜達が喧嘩しなくて済むんだ。
誰も怪我しなくて済む。
何でこんな簡単な事に気付かなかったのだろう。
それはきっと、自分の事しか考えていなかったから。
十夜に、皆に嫌われたくないという自分勝手な想いを優先させていたから。
他人の事なんか全く考えてなかったから。


