…でも、もしかしたらあたしの勘違いかもしれないし。

尚叶くんじゃない別の誰かと勘違いをしているのかもしれない。


あー、けどいい加減思い出してしまいたいな。


あたしはそう思いながら、だけどそれ以上は考えないようにしてまた尚叶くんの隣に並ぶ。

「寒いね」ってあたしから手を繋いだら少し驚かせちゃったから、それが面白くて尚叶くんの上着のポケットの中にその手のままお邪魔した。



「!」

「こうするとあったかいでしょ?」

「…うん、」



…今はまだ仕方ないかもだけど、

これから先、もっともっと尚叶くんもあたしに慣れて欲しいな。



「ね、尚叶くん。帰ったら何する?」

「…風呂入る」

「んー…あ、じゃあ一緒に入る?」

「!?…っ、ばっ…それ…!」

「うそだよーん」

「……」



あたしがそう言って笑うと、尚叶くんがまたふて腐れる。

とにかく尚叶くんを構うと面白い。


あたしはまるで、新しいオモチャを与えられた子ども。

久し振りの恋の始まりに、この時は期待しか抱いていなかった。


心の中にあったのは、大きな幸せだけだったんだ…。