ある休日。

 夜更けから降り出した雨は朝になっても止まず、双子は雨の中、朝の修行を行った。

 6月も半ばになろうとしている最近は雨ばかりだ。

 雨に濡れると風邪を引かないか心配ではあるのだが、たまには外で思い切り体を動かさないと落ち着かない。その辺りの気性は2人とも、皇族というよりは冒険者と言った方がいいだろう。


 修行の後は熱いシャワーで冷えた体を温め、橘ファミリーと一緒に朝食を食べた。食後には琴音や玲音、和音や水琴のヴァイオリンとピアノの競演を聴いてゆったりとくつろぐ。

 その後シンは部屋に戻り、宿題に出されていた数学のプリントをリィに教えてもらおうとしたのだが、妹の姿が見えないことに気づいた。

「リィ? おーい」

 リィの寝室を覗いたり、サニタリールームを覗いたりしてみたが、どこにもいない。先に部屋に戻ると言っていたので、いるはずなのだが……。

 ふと、リビングの窓の外を見やる。

 灰色の空からは、まだ雨が降り続いていた。

 なんとなく窓際へ歩いていくと、外へ続く硝子ドアの向こうに、ハニーブラウンが見えた。

「リィ?」

 硝子ドアを開けて、そっと声をかける。軒下のウッドデッキに膝を抱えて座っているリィは、呼びかけても反応しない。もしや眠っているのかと、顔を覗くようにしながら静かにもう一度呼びかける。

「リィ、寝てんのか?」

「……なぁに?」

 僅かに間を空けて、やっと小さく返事があった。

 いつもぼんやりしている翡翠色の瞳は、いつもより更にぼんやりとしていたが、ちゃんと開いていた。