「災害で修学旅行が中止になった代わりに、今年は五月にレクリエーションと言う名の勉強合宿をすることになった。喜べ」

先生の言葉に、生徒はかなり落胆した声を上げた。
どさくさに紛れて「ハゲー」と言っている人もいた。
昨年行く予定だった修学旅行は、ちょうどその時期に洪水の災害が起きてしまい、中止になった。
すっかりそのショックも忘れかけていた時期に、まさかの勉強合宿……。
私も、面倒くさいという感情を思い切り顔に出してしまっていた。ユイコは舌打ちをしていた。

しかし、先生は全く構わずに説明を続ける。
「で、宿泊先は千葉県にある海沿いの別荘だ。海だぞよかったな」
まさかの県内合宿に、ふざけんなーという声が上がった。
「青葉学園もちょうど同じ日程で合宿をするようだから、仲良くするように」

え、青葉学園と一緒に……?
驚き顔を上げたが、女生徒はすでに目をギラギラと輝かせている。


「先生、それは、もしかしたら高橋先生も来るかもしれないということですか?」
「ああ、どうだったかなあ。彼が三年生担任なら来るかな」
「っしゃあああ、水着買って来よう!」
「私も買いに行くー!」

色めきだつ女生徒とは反対に、私は顔面蒼白となっていた。
先生は「海に入るイベントはないからなー」と言っているけれど、もはやそんなこと誰も聞いていない。
先生が来るかもしれない、というだけで、こんなにも盛り上がってしまうなんて、やっぱり若様のパワーは底知れない。
いやいや待て、そんな感心している場合ではないのだ。