「うん、そう。
前回拾ったからって、芽衣さんから預かったの」
「…………っ」
「えっ!何っ!?」
急にガッと腕を掴まれて、袋を取り落としそうになる。
宙に浮いた右手の代わりに自然に左手に力が入ったから、すんのところで支えられたけど。
こんなメトロノームなんかが入っているくらい重いものを落としてしまったら、どんな音がなるかわかったものじゃない。
そんな私の内心の焦りなんて気にもせず、黒田くんはどこか深刻な顔で黙りこくっている。
「…………」
「…黒田くん?」
思わず声をかけると、ハッとしたように黒田くんの表情が戻った。
そして、すぐに手を離してくれる。
「あ………いや、なんでもない。ごめん。
とりあえず、これは俺が預かっておくから」
「あ、うん……」
なんだったんだろう…今の。
わからないまま、「じゃあ」とだけ言ってくるりと背中を向けた黒田くんを黙って見送る。
本当に…不思議な人だ。
ナイフだけを持っていった黒田くんの姿は、廊下を曲がる前に暗さでかき消されて見えなくなった。
また、1人静かな空間に放り出される。



