「………こんばんは」
「おいおい…ここでそれはないだろ?」
そんなことを考えたから、後ろに感じた人の気配にそう挨拶してみたけど。
振り向いた先にいる黒田くんは、少しおかしそうに息を吐き出しながら肩をすくめただけだった。
「だって暗くて静かだから」
「たしかに普通の挨拶だけどさ。
ここですると、一周回って異常だよ」
「そうかな」
「そうだよ」
「そっかぁ…」
もう、この状況自体が異常だからなぁ。
この際私が異常だろうがなんだろうがどうでも良い気がするよ。
少し間を置いて、黒田くんが口を開く。
「どうした?何かあったのか?」
「……雪ちゃんのこと、聞いた」
「…………そうか」
「陽くんたちは。黒田くんが、雪ちゃんのことで復讐に来たんだって、そうに決まってるって言ってた。
それは本当?黒田くんは本当にみんなに復讐しに来たの?」
「………………」
黒田くんは答えない。
暗闇の中に浮かぶ黒田くんの顔は無表情のようで、悲しそうでもあって、そして…なんでだろう。笑っているようにも見えた。
すぐに答えないってことは、そうじゃないってことじゃないの?
だってただの復讐なら。そうだって言ってしまえばいい。
だから少なくとも、復讐のためだけではないんだと———私は信じたかった。



