「なっ、芽衣!?」



技術室の奥から、戸惑ったような声が聞こえる。


…悠人さんの声だ!



その声に反応して、ピクリと〈あの子〉がそちらを向く。



「今よ!走って!!」


「っ!!」


「………あなたの目…ちょーだい…?」



朱里さんの声に我に返って、遅れて聞こえてきた幼い女の子の声から逃げるように走り出す。






何、今の………何……っ!?



結菜ちゃんから聞いた、小さな血まみれの女の子。確かにそうだった。


けど、今の…目がなかった…!?



本来目があるはずの場所にポッカリ空いた穴が、そこから流れ落ちる何かが、脳裏にこびりついて離れない。



想像より遥かに気持ち悪い見た目に、思わずえずきそうになる。



嘘でしょ…あれが〈あの子〉だっていうの…!?


あんなの、どこをどう見たって人間なわけがない。



殺される。…絶対、殺される…!!!



もう姿を見るのも怖くて、振り向くことさえ出来ずに無我夢中で前だけを見て走る。




「っ、おい!!〈あの子〉!!!こっちだ!!」




後ろから、大きな悠人さんの声が聞こえた。



何やってるの…!?



悠人さんの信じられない行動にびっくりして一瞬足を止めてしまった私は、つんのめりながら近くの教室に滑り込む。



何も考えられなくて思わず近くの教室に入っちゃったけど…こんなに近くに隠れて大丈夫かな…!?