ガァン!!!!
「ひっ……!?」
突如、人影が濃くなったのと同時に目の前のドアが大きく揺れた。
スライド式のドアが、横じゃなくて前後に。
すりガラスの至る所に、何か黒い飛沫が付く。
………なにっ?
突然の爆音に引きつった音を出してしまった喉、びくりと一回震えたのを最後に動かなくなった身体。
何が起こっているか瞬時に理解できなくて、扉を、正確にはその向こうの人影を、じっと見つめる。
ガァン!ガァン!ガン!ガン!ガン!
私の不安を煽るように続けざまに鳴り響く音はだんだん感覚が短くなっていって、一回鳴る度にすりガラスに飛び散る液体が生々しかった。
小さくて、すりガラスが透明だったらギリギリ見える口元が見えるくらいの高さの頭の影が激しく動く。
扉の向こう側に見える人影がすりガラスに思いっきり頭を打ち付けているのだと気付いたのは、一体何度目の音が鳴った時だったんだろう。
結構時間が経ったようにも感じたけど、その間も人影は扉を開けることはなく、むしろドアを突き破ろうとでもしているみたいに勢いを増していく。
…一体、なんなの?
人、なわけない。
けど、〈あの子〉だったとしても、意味がわからない。
こんなに…血が飛び散っていて、なおも打ち付け続ける狂気が私を圧倒する。