すりガラスの窓は、中の様子をはっきりと見せてくれない。
それでも…すりガラスの向こうで人影がゆらりと動いたのだけは、はっきりとわかった。
「っ!」
カチンッ!
驚きのあまり思わず引いた私の手が、扉の取っ手を弾いて音を立てる。
それは普段気にもしない小さな小さな音だったけれど…今の私を震え上がらせるには、十分だった。
ゆら、ゆら、と左右に揺れた人影が、だんだん近く、濃くなっていく。
扉を一枚挟んだ向こう側、すぐそこに、何かがいる。
人?それとも〈あの子〉?
そのガラスが透明でないことを、心の底から恨んだ。
人影が何をしているのか、見えない。
私を襲おうとタイミングをうかがっているのかもしれない。
私と同じように、扉の先にいる人が誰なのかわからなくて、ドアを開けられないのかもしれない。
音が小さくて一瞬だったから、私の存在を確信していないのかもしれない。
……わからない!!
震える足をなんとか後ろに引いて、美術室から遠ざかる。
なんにせよ、離れておくに越したことはない。
いつ開いてもおかしくないドアを注視しながら、じりじりと後ずさる。
ドアは動かない。
人影も動かない。
緊迫した雰囲気の中、痛いくらいの静かさが逆に私を追い立てた。
心拍数が上がる。
それから、おもむろにすりガラスに映った人影がぐらりと大きく揺らいだかと思うと。



