「お母さん?」

「お母さんね、お父さんが初めて付き合った人なの」

「そうなの?」

「そう・・・。大好きで、大好きで・・・。だから、どうにかしてでも縋り付いていたかったのね」




初めて話してくれる、お母さんの想い。
私は黙ってお母さんの言葉を聞く。




「そのせいで、奏音にはとてもつらい思いをさせてしまった・・・。あなたを失うかもしれないってこのひと月ずっと考えてたら・・・お母さん、覚悟ができたわ」

「覚悟?」

「お父さんと別れる覚悟」

「え・・・」

「お父さんと、ちゃんと話して、それでも解り合えなかったら・・・。だから、お母さん。お父さんときちんと話し合ってみる」




お父さんに依存していたお母さん。
お父さんがいなければ、なにもできなくて、何も決められなかった。

そんなお母さんが立ち上がろうとしている。




「お母さん・・・。ありがとう」