蒼は黙ったままでいた。



それが、素直な返答だった。



「…どうして?
だってあの人、幼なじみってしか蒼くんのこと見てないじゃない。
みんな言ってるよ?
あんなに近くにいるのに、ズルイって…!」





って言われてもな…。



じゃあこっちだって言いたい。

幼なじみだからってどうして好きにならなきゃならないのよ。

人の恋愛、勝手に決めつけないでよ。

蒼が勝手に、私を好きになっただけじゃない。



「仲川さんってさ」



しばらく黙っていた蒼が、ぽつりと言った。



「俺を好きになってくれて、どれくらい経つ?」


「え…去年からだけど…」


「へぇ、意外に長いね。
この前のコは一ケ月前からだった」


ふ、と蒼は小さく笑った。


「別に比べてるわけじゃないよ。
片想いの長さで、気持ちの重さをはかるものじゃないし。

けど…俺はさ、

もう何年も昔からあいつが好きなんだよね。
それこそ、いつ好きになったかわからないくらい昔から、ずっと。
もう俺の一部みたいに、心の中にはずっとあいつがいるんだ」


「……」


「もういい加減しんどいから、忘れようと思って告白してくれたコと何人かつきあったりしたけれど、ダメだった。
結局は『やっぱ、あいつだけなんだ』って思い知るだけで、みじめな気持ちや付き合ったコに対しての罪悪感ばかりが残った」



思い出すようにゆっくりと語るその口調は柔らかかったけど…

仲川さんの想いはけして通らないような、頑なさがあった。