きゃあきゃあ言う女子たちに、天使のような笑みを返し、掛ける言葉一つ一つがお砂糖たっぷりに含まれているんじゃないかってほど優しくて甘い。

王子様みたいな顔で、王子様みたいな言葉を掛けられたなら、誰だってイチコロだろうに。


「ねえ、後輩」

「なんですか、先輩」

「ちょっと、私にも優しい言葉を掛けてみてよ」

「頭がイカれましたか?」

「優しい言葉どこ行った!?」

「なんなんですかもう。控えめに言って気持ち悪いです」

「控えめもどこ行った!?」


私に対しては、例外だが。


目の前に座る後輩は、私にびっくりするぐらい辛辣な言葉の槍を突き刺してくる。そりゃあもう、白ひげ危機一髪くらい。容赦もなければ、優しさも控えめさもない。私が嫌味の一つでも言えば、その綺麗なお顔に背筋の凍るような笑みを浮かべて、10倍くらいの嫌味が返ってくる。


後輩から感じるのは尊敬の念ではなく、仲間うちの仇を取る醜悪の念すら感じる。先輩泣いた。先輩なのに。

一年早く生まれたからって、敬う必要はないって言ったの私だけどさ! 違うじゃん! なんか違うじゃん! 敬うとか慕うとか以前の問題じゃん!


はあ……もっと優しい後輩が欲しかった。せめて、先輩って私の名前を呼びながら、笑顔を向けてくれる優しい子がよかった。ついでに、私に暴言を吐かない、言わない、さげすんだ目で見ない、心の澄み渡るような綺麗な心の持ち主がよかった。