「コータロー…じゃん。」

思わず口にしてしまったその名前を、すぐにでも飲み込んでしまいたかった。

ゆらゆらと…あたしを揺らすから。


てか、どうしよう…。

コータローから電話なんて初めてだし、着信があったのは10分前…今からかけ直しても大丈夫かな、でも今電車の中だから無理か…。

考えるだけで緊張して、手に変な汗をかく始末。

そして、迷ってる間にもどんどん学校との距離は縮まり、少しだけ残念な気持ちを引き連れて、あたしは学校に到着した。

「あ、繭子おはよ〜!」

既にスリッパに履き替えた愛衣が、元気よく手を振っていた。

「うん、おはよ。暑いね〜。」

そこへ駆け寄り、あたしもスリッパに履き替える。

「ねぇねぇ繭子、ゆうちゃんも補習組だって知ってた?」

愛衣が小声で話してきたのは、ゆうちゃんの事。

「え?そーなの?」

「うん。昨日数学の補習で一緒だったんだ。」

「意外…。」

「でしょー?」