それとも、ただ感傷に浸ってるだけなのか……。


「ごめんね、ホント大丈夫だから。歌お?」

少しして愛衣の腕から離れたあたしは、デンモクを手に取った。


「よーしっ!歌うぞ繭子!男がなんだ〜!」

「あはは。繭子、愛衣が何か言ってるよ?」

「…泣いてる場合じゃないね(笑)。」

「そうだよ、元気出そ!で、あたしみたいに美羽に誰か紹介してもらったら?」

「…まだいいや(笑)。」

あたしは、涙を拭いた。

拭いた後のあたしの目は乾いていて、涙が出てこなかった事に安心した。

それから18時まで歌って騒いだあたし達は、それぞれの帰路についた。

あれからコータローとは、ウェイターとして現れるでもなく、会計時にカウンターに居るでもなく、顔を合わせる事はなかった。

会ったところで話す事もなく、気まずいだけなんだけど…。

ただ、コータローとこんな風になってしまった事が、悲しくて。

影を作ってばっかりの、あたしが居た……。