教室を出ると、1年生のうちの1人が追いかけてきた。
どことなく、1年前の小林に似ている小柄な男子だった。
「帰っちゃうんですか、この後の打ち上げ、先輩も一緒に行きましょうよ」
「私は良い。気ィ遣わせるだけだから」
先程言われたことをそのまま返しながら、歩調を速める。
後輩も、一定距離を空けながら早足で追って来た。
外へ出ると、小雨が降っていた。
「小林先輩、優しいし話し易いのに。何でまったく喋らなかったんですか」
背後から改めて投げかけられた問いに、私は何も返さなかった。
雨の中一歩踏み出すと、後輩は傘を広げながら私の横に並んだ。
ザーザー降りの中、傘を持たない同級生が次々と、私たちを追い越して行く。
携帯の着信音に慌てて鞄へと手を伸ばすと、「俺のです」と後輩が笑いながら言った。
「先輩はお酒呑まないんですか? …って、まだ誘ってるわけじゃないんですけど」
後輩に言われて顔を上げる。数名の上級生が灰皿を囲んで煙草を蒸しているのが目に入った。
気が付けば、あの酒屋の前にいた。
1年前の春、雨の日に。ここで小林を待っていた。
泣きそうになりながら、助かるまでは絶対に泣いてはいけないと自分に言い聞かせて、小林をずっと待っていた。
どことなく、1年前の小林に似ている小柄な男子だった。
「帰っちゃうんですか、この後の打ち上げ、先輩も一緒に行きましょうよ」
「私は良い。気ィ遣わせるだけだから」
先程言われたことをそのまま返しながら、歩調を速める。
後輩も、一定距離を空けながら早足で追って来た。
外へ出ると、小雨が降っていた。
「小林先輩、優しいし話し易いのに。何でまったく喋らなかったんですか」
背後から改めて投げかけられた問いに、私は何も返さなかった。
雨の中一歩踏み出すと、後輩は傘を広げながら私の横に並んだ。
ザーザー降りの中、傘を持たない同級生が次々と、私たちを追い越して行く。
携帯の着信音に慌てて鞄へと手を伸ばすと、「俺のです」と後輩が笑いながら言った。
「先輩はお酒呑まないんですか? …って、まだ誘ってるわけじゃないんですけど」
後輩に言われて顔を上げる。数名の上級生が灰皿を囲んで煙草を蒸しているのが目に入った。
気が付けば、あの酒屋の前にいた。
1年前の春、雨の日に。ここで小林を待っていた。
泣きそうになりながら、助かるまでは絶対に泣いてはいけないと自分に言い聞かせて、小林をずっと待っていた。



