体にも心にも鉛が吊るされたようで、何もない暗がりの中へと沈められていくのを感じていた。

家に行くから今すぐ住所を教えろよ、と電話越しに怒鳴られた時、隣りに誰かがいてくれたのなら、どれだけ心強かっただろう。

――出会ったばかりでこういうこと言うのもどうかとは思うんだけどね。

未だ通話中と表示されている携帯の画面に気付かないフリをする。

両手で耳を覆って、部屋の隅に蹲る。

――助けてほしいとかじゃないんだけど、誰かに話を聞いて欲しくて。

――小林君なら、話し易いんだけど、こういうこと相談していいのかな。

泣いたらいけない、助かるまで、泣いたらいけない。

自分にそう言い聞かせながら、その夜を過ごした。