結局その日は連絡がとれなくて、翌日めちゃくちゃ謝られたけれど、殴られた後だった私はいつも通りには笑えなくて、素っ気なく短い返事ばかりしていた。

「今日は俺ちゃんと空いてるから。紺ちゃんさえ良ければ…」

いつも通り抑揚のない声で、けれど確かな優しさを含んだ言葉を彼は私にくれたけれど、素直にそれを喜ぶことができなかった。

「大丈夫、忙しい時にムリを言ってごめんなさい」

その時はそれが私にとっての精一杯で、ただ彼が、私の首だとか肘だとか、頬にできた小さな傷の１つにでも気付いてくれることを僅かに期待していた。

期待しながら、ただジッと俯いていた。

痣のできた膝小僧に、涙が零れそうだった。

――助けて、小林君。

彼の名前を呼びたかったし、去って行く彼の腕を掴みたかった。

けれど本当に悲しい時、声なんて出ない。