大学から少し離れた場所に、小さな寂れた酒屋がある。

お店の横には煙草の自販機と灰皿が置かれていて、陽の出ている時間はいつも、大学の3、4年の誰かしらが煙草を蒸している。

1年前の春、雨の日に。私はここで、5限まで講義のある男子を待っていた。

いつも誰にでも親切な彼なら聞いてくれると思った。

出会ったばかりの人たちにあまり後ろ向きなことを言えなかったけれど、その日も背後まで恐怖の対象は迫っていて、優しい人に頼りたかった。