夏休みの間、目覚ましにアラームをかけることがなかったため、9月最初の登校日、私は10時過ぎに起床した。

昼休みに学生総会があるはずだから、それに間に合うように行けば良い……。

1限目のドイツ語初級と2限目の統計学は、初日は講義説明で終わるはずだ。
 
冷蔵庫の中に入っていたゼリー飲料を飲み干すと、洗面台へと向かう。

夏休み中はまったく化粧をしていなかったから、肌には艶が出ていて、化粧水と乳液の後に塗ったファンデーションは、今までにないほど色が馴染んだ。

コンセントにコテとドライヤー両方を突っ込み、温まるのを待つ。
 
――3限に哲学入門、4限にカウンセリングの応用……。先輩たちはその後で呑み会があるんだっけ。
 
今日の予定を思い出しながら、ドライヤーで髪を乾かす。
 
夏休みは無駄に長かったものの、大学の人たちとは一切連絡を取らなかった。

そもそも、前期の間に私は友人という友人を作ることができず、ゼミの連絡網のために学籍番号の近い男子にSNSのアカウントを教えた以外、誰とも連絡先を交換していない。

実家とは長年の確執があり、帰る気にもなれず、そもそも「帰って来い」とは一言も言ってもらえなかった。
 
近所のレンタルビデオショップで古い洋画を借りてきて、昼間はビデオ鑑賞をし、陽が沈む頃に駅前の喫茶店へアルバイトに行く。

そんな生活を1か月以上繰り返していた。
 
「今日から勉強漬けとかクソ怠い」
 
本音とも言えない、ただ何となく思いついたことを口にして、大きく溜息をついた。