抱き寄せて、キスをして《短編》

後に冷たい、シトラスの香りの風を残して。

新太……。

私は唇を噛み締めて、小さくなっていく新太の後ろ姿を見つめた。

もう、本当に終わったんだね、私と新太のあの日々は。

良く考えたら、何の意味があるのか。

定時後、私が加奈ちゃんと話す理由などないのではないか。

加奈ちゃんと新太の事は、ふたりの問題で、ふたりが解決すべきだ。

私がしゃしゃり出る必要はない。

私はホッと息をつくとオフィスに戻った。

加奈ちゃんは先に戻っていた。

私達以外、周りに人はいない。

今だ。

「加奈ちゃん」

「アンナ先輩」