抱き寄せて、キスをして《短編》

「拭け」

「え?」

「唇、拭けって!!」

新太が私の首に片腕を回して、もう片方の袖を私の唇にあてがうと、乱暴に擦った。

「痛っ!痛いよ新太っ!」

袖との摩擦で、私の唇は一気に熱くなった。

「痛いってば、新太っ!」

その時、新太が乱暴に私の頬を掴んだ。

眼鏡の奥の瞳が苛立たしげに光っていて、私は眉を寄せたまま、それを見つめた。

「俺とのキスより、良かった?それとも、もうヤったわけ?感じた?イッた?」

「し、ん」

ヒリヒリと痛む私の唇に、新太が自分の唇を寄せて乱暴に塞いだ。

嘘でしょ。