抱き寄せて、キスをして《短編》

新太は何故か黙りこくったまま、私の真正面に立ち、唇を引き結んでいた。

「なに、どーしたのよ?今日は加奈ちゃんと一緒じゃないの?」

新太は答えない。

私は新太の腕を掴んで揺すった。

「ねえ、新太ってばっ」

それから新太の眼鏡越しの瞳を見上げる。

「新太?!」

「アンナって三崎課長嫌いじゃなかった?なんでキスしてんの」

新太の声は低く、冷たかった。

「へ?」

私はビックリして、新太の腕から手を離そうとした。

その手を素早く新太が掴んだ。

「なあ答えて、アンナ」