抱き寄せて、キスをして《短編》

課長は私の手を離さなかったから、私も素直にそのまま歩いた。

街はとても賑わっていて、手を繋いで歩く私達を、誰も気にしてはいなかった。

街路樹に絡められたライトがとても綺麗で、なんだか私達は恋人同士みたいだった。

「課長、もうここで結構です。ありがとうございました」

いつも新太と別れていた交差点で、私は課長にそう言った。

「そうか。じゃあ、また明日」

「はい」

課長は私の手を離さない。

「あの、課長?」

「アンナ」

「……っ!」

勢いよくその手を引かれ、私は課長に抱き締められると同時に、キスをされた。

唇に課長の大きな唇が重なり、私は眼を見開いく。

多分、3秒くらい。