抱き寄せて、キスをして《短編》

かまわないのかよっ!

私はどうすりゃいいのーっ。

もう、恥ずかしいわ不思議だわで、私はアタフタと狼狽えた。

そんな私を見て、課長は照れたように笑った。

「この間の、サンプルの件、寺田から聞いたよ。頭ごなしに悪かったな」

わたしは、首を振った。

「いえ、あれは私のミスです」

課長は、思いきったように言った。

「ずっと、お前が気になってた。俺との事、考えてみてくれないか」

課長との事……?

「は、い……」

そうしか、言えなかった。

課長は私の額に唇を押し付けてから、体を離した。

「送るよ」

「ありがとう……ございます」

それから私達は、まるで散歩をするようにゆっくりと歩いた。