抱き寄せて、キスをして《短編》

何だかそれが新鮮で、結構楽しかった。

「課長、ごちそうさまでした。課長、お酒強いですね」

店を出て大通りを目指しながら、私が悪戯っぽく笑うと、課長は綺麗な顔を私に向けた。

「弱く見えてたか?」

「ははは。そんなこと、考えた事ないですよ」

「考えてくれないか、これから俺の事」

「は?」

二人だけの路地裏で立ち止まり、ボケッと課長を見つめていると、課長はあからさまに嫌そうな顔をした。

「お前、鈍いのか」

……鈍いんじゃなくて、あんたがビックリさせてるんだよっ。

「そんなに見つめるな」

言うなり課長は、フワリと私を胸に抱いた。