抱き寄せて、キスをして《短編》

「座れ」

「はい」

大通りから一本北に入った、狭い通りを更に北に入り、路地裏に進んだ先にある料理処。

「何でも好きなものを食え」

「はあ」

……多分、会話が弾まない気がします……。

私は何だか物凄く居心地が悪かったから、課長に思いきって言った。

「課長、お酒飲んでもいいですか?」

三崎課長は私を見つめると、フッと笑った。

「いいよ」

ドキンとした。

だって、『いいぞ』じゃなくて『いいよ』だったから。

課長は、私に会社の顔とは違った顔を見せた。