しかし、すぐに笑いをこらえるような顔をしてきた
「ちょっと!!」
お前は一体なんなのだ
いや、私の弟だということは分かってるがそうではない
そうではないのだ我が弟よ
青ざめるほどひどかったこの顔が面白いのか、そうかそうか
ふざけてんのか
お前、好きな子にそんなことしたら即嫌われるぞ
今年、高1になる私と2つ年下の弟、そして父と母
私こと高来沙弥(こうらいさや)は家に居ればまぁ普通に会話を交わせる
普通というかおしゃべりな方だ
男という存在は苦手だが家族内だったら話は別だ
弟も父も全然大丈夫
いや、男として見てないからかもしれないけどさ
人見知り症状なんか出してたらとっくに独り暮らしだろうがなんだろうがしているところだ
私が苦手なのはとにかくクラスの中心にいるような男の子だ
とにかく怖くて絶対に2人きりでなんか話すことはおろか息すら出来ないかもしれないという感じだ
どっちかというと緊張と恐ろしさで息をするのを忘れるといった方が近いかな
「ぶっっはっはっはは!」
あーはいはい、吹き出すほどなのね
昔はかわいかったのに時の流れというものは恐ろしい
こんな生意気になりやがって、昔はお姉ちゃん、お姉ちゃん、って寄って来て…今更こんなこと言ったら生意気な返答が返って来るのだろうけど
うるせぇ、だの
黙れ、だの
かわいくないこと言いやがって
学校じゃそれなりにモテてるらしいけどさどこが良いのやら分かんないわ
ていうか私、男の子が昔から苦手だから恋なんてしたことないけどね
でも、私は変わるの
高校デビュー絶対に成功させてやるわ
そして青春とやらを味わって、毎日薔薇色の生活を送るの
これが私の夢
「あんた、いつまで笑ってんのよ」
未だにひーひー笑っている弟を睨み付けてから私は化粧を落とした
せっかく私が夢に浸っていたというに…何てやつだ
「あれ、落としちゃうの??」
「あたりまえじゃん」
笑うのをやめてそう聞いてきた弟に私は冷めた声でそう返した
だいたいお前だって笑っていたじゃないか
そんな変なメイクで家中を歩き回れるわけがないだろうが
それともあれか、似合ってた??
よくあるあの正直なことを言えない思春期特有のあれですか?
かわいいところあるじゃないか、照れんなよ、我が弟よ
「似合ってた?」
もうすでに落としてしまっている途中で顔がでろでろになっていたが私はキメ顔でそう訪ねた
しかし弟の顔は険しくなりやがてドン引きしているようなリアクションをとる
「んなわけねぇだろ」
冷めた声でそう言ってから弟は洗面所を後にした
な、なんなんだお前は、少しはデレてくれたっていいじゃないか
ほんっとにかわいくない!これじゃ私がただの恥ずかしい人じゃないか
私の心は恥ずかしさとイラつきで溢れていくようだった
いいわよ、別に
これから練習して絶対に上手くなってやるしね
私は八つ当たりするように水を自分の顔に勢いよく浴びせた