スウェルは言われるままにマリカに膝の下の傷を見せる。

布に薬草を包んだものを傷に押し当てて、マリカは手をかざすと、スウェルの傷はあっという間に跡形もなく消えた。


「君は回復魔法が使えるのかい?」


「魔法?これは・・・傷によくきく薬草をいつも用意していて、あとはおまじないみたいなもので・・・。」


「いや、君は手をかざしただろう。
薬草はおそらく、君の体力を奪わないようにするアイテムなのだろう。
アイテムを使った方が、傷もきれいに治るし、痛みも少ない。
でもどうして・・・君はシューカウリの人なのに。

あっ、今度は私が君の肩を診る番だ。
その薬草を貸してくれ。」


スウェルが薬草をマリカの傷に当て、手をかざすと傷が治っていく。


「領主様も同じことができるの?」


「ああ・・・あ、俺のことはスウェルと呼ぶといい。」


「でも、私は使用人ですし・・・そんなことしたら叱られてしまう。」


「じゃあ、2人だけのときはスウェルと呼ぶこと。
それならいいだろう?
俺もおまえと2人なら、気楽に自分を俺と言えるし、楽にしゃべれそうな気がするんだ。」


マリカはふと、妙な気持ちが生まれた気がした。

(どうしたんだろう・・・敵で、新しい領主で大嫌いな魔法使いに笑顔で話されて、なんで楽しい気持ちになるんだろう。)


「ん?どうした・・・?
また、俺の隙をつこうとしているのかい?」


「いいえ。今戦っても、私はまたとらえられるだけだし。
だから、スウェルといる間に私は強くなるわ。

それからあらためて、あなたに決闘を申し込む。
それなら文句ないでしょう?」


「ふ、ふはははは。マリカはほんとに面白いことを考えるんだな。
さっきは回復魔法なんか使って驚かせてくれるし、小悪魔だな。

それにしても・・・腹減ったな・・・まだメシの時間じゃないし、使用人に頼むのもなぁ。
家臣には毒見をしてからだってうるさく言われるし・・・。」



「あの、ミルクケーキでいいなら私の部屋に置いてあるから、食べませんか?」


「ミルクケーキって君が用意してもらったんじゃないのかい?」


「いえ、朝のうちに私がこっそり作っておいたので。」


「君が作ったのかい?へぇ・・・なんか意外だな。何のために?」


「それは・・・腹が減っては戦えないから。」


「俺と?・・・ふはははは!俺と戦ったときのために作っておいたものを俺にくれるというのか?」


「だって、領主なんでしょ!倒れたら町の人たちは困るじゃない。
取ってきます。リビングに行っててください。」



「うん。(なんか調子が狂う。薬草に回復魔法・・・そしてお菓子作りか。)」