マリカは夜になってふと考えた。

オーレアはどうしてスウェルにあんなちっちゃな魔法を教えたのかしら?

戦いに勝てる魔法ではなく、私にあれこれとするような・・・せいぜい近所の人相手に手品のかわり程度しかないような小さな魔法を?



すると、ベランダからハリィの声がした。

「戦いは俺とカナビスに任せろよ。
いや、俺たちも本来の力を出すときはめったにないと思う。

オーレアは未来を見つめて強化してくれた。
もちろん自分もね。

オーレアはサヴィナさんと仲良くなりたいみたいなんだ。

だからご主人だったソロさんの遺体からソロさんの最期の声をきいて自分に移植しちまった。

まぁ、そのおかげで師匠も壊れた体を引きずらずに済んだわけさ。」



「なるほどね。オーレアらしい発想だわ。
でもサヴィナさんは嫌がってないの?」


「それがね・・・まんざらでもないみたいだよ。
あくまでもお友達としてはね。」


「そう・・・うふふ。だけど、スウェルの指を鳴らす魔法って・・・なんの役にたつのかしら?」


「役に立つよ。とてもね。

スウェルとマリカがののしりあいながらも、仲良くなればいっぱい子どもに恵まれてみんなのお手本となる家庭ができるだろう?
オーレアの夢さ。」


「夢ねぇ・・・。なんか男の人らしいというか・・・エッチ。」


「おい・・・そこまで言ったらスウェルがかわいそうだぞ。」


「そうねぇ。努力してみるわ。
せいぜいスウェルには、精のつくお料理でも食べてもらわないと!かしら?」


「うんうん・・・そうだね。俺もごちそうしてもらおうっと。」


「あら、ハリィは帰るんじゃないの?」


「おい、そんな冷たいこと言うなよ。」


「あははは、ハリィはお帰りなのでしょう?
うちは牛の赤ワイン煮込みなのよ・・・残念だったわねぇ。」


「頼むよぉ・・・赤ワイン煮込み食べたいよぉ。
お願い、マリカ様!!
酒は少なくても我慢できますから、メインディッシュをめぐんでくだされぇ!」


「あ、ハリィ。手術うまくいったんだね。
うちで夕飯食べていくんだろ?」


「ああーーーー!スウェルゥ!!!やっぱりあなたは素晴らしい領主様だ。
マリカが夕飯食べずに帰れっていうんだよ。
それひどいよなぁ。」


「用事があるなら、帰っていいぞ。
って・・・嘘だ。
あはは、食っていけよ。
奥さんにはあとで、俺がお仕置きしておくからさ。」


「スウェル!!お仕置きって。」


「食事までは夫のいうことをきいてくれ。
遅くなったら、君のお願いを何でもきいてあげるから。ねっ。」


「きゃああ!スウェル何を?」


「もちろん、キスだよ。
俺たちは新婚なんだし、いいじゃないか。
何だったら、ここで魔法を使っちゃおうかなぁ。」


「だめっ!だめだったら。
使ったら、殺してやるから。」


「あははは。ハリィは腹が減ってるだけだよ。
俺たちがイチャイチャしてれば、嫌がって帰ってしまうよ。
な、ハリィ?」


「ああ、長居はしたくないなぁ。
とにかくめしぃーーーー!」


「わかったわかった。」