そしてしばらくして終戦を迎えた。


サヴィナが代表となり、隠れて生活していた魔物と人間のハーフ、そして穏健派な魔物たちは戦場となった地域から1km離れたところに集落を構えた。

そして、パイプ役をマリカとスウェルが請け負うこととなった。


「どうしたんだろう・・・終戦なのにまだスウェルの姿を見ていないわ。
どこにいるのかしら。」



スウェルが病気かけがをして動けないなら、なおさら早く自分が薬を調合してあげたいとマリカは思っていた。

そして1週間後にスウェルの使いという人物がマリカを訪ねてきた。


「ぜひこれから、私共とスウェル様の待つ地域に行ってほしいのです。」


「あなたはほんとにスウェルの使いなの?」


「お疑いがあるのは承知の上。ですから、このとおり、スウェル様からの書状とこれを。」


「これは・・・私があげた、薬草が入れられるロケットペンダントだわ。」



『マリカへ
なかなかもどらずに、こんな書状を送りつけてしまい申し訳ない。

俺は元気だが、オーレアの手伝いのためもう少しここにいなければならない。

で、君に頼みがあるんだ。

整形外科の第一人者といわれるシラト医師を連れてここにきてほしい。
できれば、君には傷によく効く薬草も頼みたい。

よろしく頼む。

スウェル・ラウォン・ビレッサ』



マリカは大急ぎで、シラト医師に事情を説明して、スウェルのところへと向かった。




「スウェル!!どこなの。
シラト医師を連れてきたわよ。」


「やぁ、マリカ。君も無事だったんだね。
部下からサヴィナたちのことをきいて、君のがんばりはよくわかったよ。

シラト医師もよく来てくださいました。
話はともかく、奥に入ってオーレアと相談してください。」


「わかりました。しかし・・・その・・・王族の方々はここにはいないようですな。」


「はい。王族の方々には本国の方にもう帰っていただいています。
あとは我々だけです。」



マリカもどうして、皇太子たちより、スウェルとオーレアが残っているのか不思議だった。


その説明をスウェルから聞く前に、カナビスとハリィの消息をマリカは尋ねた。

すると。スウェルは奥のキャンプへとマリカを連れていった。


そこにはたくましい体格をした魔物と干からびたようになっているオーレアの死体が横たわっていた。


「う・・そ・・・どうして?
どうして・・・オーレアは・・・シラト医師と話をしてるんじゃないの?
どういうことなの?」


「じつはねぇ・・・大きな声では言えないんだけど、っつーか王族の方々にはナイショなんだけどね。
オーレアは今、シラト医師に手術してもらってる。」


「はぁ???どういうことなの?」


「オーレアは天才っていうか・・・もうここまできたらバチ当たりというか、ソロとサヴィナのことが好きになってしまってね、殺すには惜しい男だって自分がソロになってしまったんだ。」


「はぁ?えぇええええ!!?どういうことなの。」


「えーとややこしいんだけどね、ソロは自害した。
けれどソロの生命力はとても強いものだったから、体が弱っていたオーレアはソロの生命力を吸い取ったんだ。
オーレア自身はもうすぐ寿命だった。

だから、彼はソロの体に憑りついたのさ。
しかし、そこにはもうソロの精神はいない。
それで魔物のスタミナを利用して、たくましいオーレアになるべく、シラト医師の出番ってわけ。」


「そんなことできるなんて・・・なんて神様を恐れぬ行為なの?
だけど・・・それなら、あの子たちは・・・魔物と人間のハーフたちは救われるわ。」


「そうだね。だから、オーレアはこっちに住むそうなんだけど・・・。
君は俺の邸にいてくれるよね。そういってくれ。」


「もちろんよ。夫を待つって約束したじゃない。
あ、で・・・カナビスたちは?」


「じつはね、カナビスは魔力を持ったんだ。
これもオーレアが元の体で最後にやってくれたことなんだけど、カナビスが近衛兵としてふさわしい実力を持てるようにって、死んでしまった魔物とのハーフの子どもを媒介にして、そこに自分の魔力をのせてカナビスは今まで以上に気は優しくて魔力持ちになってくれた。

それだけじゃない、結婚しちまった。」


「えっ?カナビスがぁ・・・いったいどういう?」


「王室御用の魔法騎士とな・・・いや、アリシュレア様の一の側近という、マリーナ・ロットとな。」


「マリーナって私と似た名前の長身でモデルさんみたいなカッコイイ人?」


「そう、男まさりなあのマリーナがカナビスと結婚した。」