スウェルは握手をするように右手を差し出した。

オーレンはスウェルに握手をするように手を重ねると、重なったところが金色に光り始めた。



「うん、君はきちんと教えたことをすべて身に着けているね。
それなら、残りはほんの少しだけだ。」


「俺に魔法を伝えてどうなさるつもりなんです?」


「どうもしないよ。
でも、この姿でマリカには会いたくないな。
けさも驚いていたよ。
つらかった・・・ほんというとね、僕が好きだったのはマリカの本当の母親だったんだ。
でも、彼女は亡くなって・・・。」


「そういうことだったんですか。
ひどい人だなぁ。先生は・・・」


「農民の子せがれだと思っていたが、時というのはすごいものだね。
今は国を代表する魔法騎士様だ。

いや、これは嫌みではないからな。
ほめてるつもりさ。
僕は結局、自分の老いに負けるしかない。
しかし、これが本来の姿なんだよな。

あと少しの間だが、できるだけのことはしたいと思う。
けど、マリカには今までのようには会いたくないんだ。」


「プライドですか?」


「男ならいいかっこしたいだろ?
べつに面会謝絶ってわけじゃないから、マリカが望めば会うよ。
けど、ずっといるのは娘に介護されてるみたいで、嫌だな。

僕は・・・」



「恋していたいんだ。ずっと・・・すてきな女性にね。
ふふふ。」



「ちぇ、変なことをおぼえていたんだな。」


「芸術肌の師匠なのも理解していますから。」


「ならいい、よろしく頼む。」


「あの、マリカの住まいは?」


「わからん・・・マリカの思うところはマリカの自由にしていいと言った。
だから彼女が何らかの結論を出してくれると思う。

べつに、僕をずっと介護してほしいとは思わないからな。
世話はメイドたちがやってくれるしな。」



「そうですか・・・俺も彼女の意思を尊重したいです。」


「じゃ、要件はそれだけだ。
スウェル・・・これからのこと頼む。
もちろん、僕も簡単にくたばるつもりはないけどね。」


「はい。なるだけ長く、がんばっていてください。
では、俺はこれで・・・仕事にもどります。」



スウェルは家にもどって領地内の仕事に出かけていった。

心の中ではマリカに帰ってきてほしいという思いがわきあがっていた。