守られるのは卒業よ!

スウェルは表情を曇らせながら、話をつづけた。


「我らにはこんなことができるのだ。」

ライダルの目の前で、スウェルはろうそくだけの燭台のろうそくに火をともした。

「そしてこんなことも・・・な。」


指をはじくと、ライダルの顔の回りに黒い粉末が土星の輪のように回り始めた。


「これは毒の輪だ・・・。すぐにあなたを殺すことができる。
こういう技を力を持たない人間は恐れ、遠ざけたがるのは仕方のないことだったのだろうな。
とはいっても、怪物たちに追われて一刻も猶予がなかった我々を締め出したことに違いはなかった。

隣国ターニブリが我らを保護してくれたにもかかわらず、怪物たちが追ってきて・・・我らがのちに怪物を倒せるだろうと理解して我らを逃がしてくれようとした国王のオルバだったが・・・シューカウリのヤツらはオルバもろとも、敵とみなして殺してしまった。

だから、我らは立ち上がった。
むやみに力は使うまいと思っていたが、使わざるを得ない状況にさせられたんだ。
それをわかってほしい・・・これから少しずつでも民にわかってもらうつもりだ。」


「そういうことだったんですか。
なるほど。」


「私を信用してくださるのか?」


「はい。私には腑に落ちないことがございました。
主がマリカを託すと、何とも悲しげな顔で・・・『おまえの娘として稽古をつけてやってくれ』とおっしゃって。
いつも戦いの前は悲しげな表情などよりも、敵を殲滅する覚悟の方を優先される方々だっただけに・・・不思議でした。
しかも、私を置いていくなど・・・。

私はふだんは次男のキシル様の剣術指南係でしたから、どうしてマリカ様をつれて逃げるように命ぜられたのかと不思議でした。

主はきっと死を覚悟していたのだと思います。
姉君2人は農家へと逃がされ、剣に親しまれたマリカ様を私に託されて行っておしまいになられた。
私はマリカ様の命をかけて守らねばならないのです。
だから、スウェル様のお話も冷静に聞かねばならないと思っています。」


「そうか、そなたがそういってくれるのはありがたい。
私もマリカに危害を加えようなどとは思わない。

ただし、私を敵として命を奪いに来ない限りはな。
で、今の話をふまえて、マリカを説得してほしい。
そして、この邸で私の仕事の手伝いをしてもらえれば、私としてはここに住むことも、剣術の練習を続けるのも、その他に学びたいことがあれば協力は惜しまない。
どうかな?」


「そ、そんな・・・それではあまりに・・・あなたに何の得があって・・・。
はっ・・・もしや、あの・・・マリカをスウェル様は・・・。」


「えっ!?
私には妹がいたのだ。しかし、私が15のとき、流行り病で亡くなった。
病気を治す魔法などなかったんだ。

生きていた頃はじゃじゃ馬で、剣が好きでな・・・父にねだって教えてもらっていた。
当家は私と妹の2人兄妹だったのでな、妹をなくしたら・・・子どもはもう私しかいなくて。」


「わかりました。マリカがどういうかわかりませんがやってみましょう。
あの、もしかしたら世間知らずな娘ゆえ、理解できずにスウェル様にひどいことを言うかもしれませんが、それはなんとか穏便にしていただきたいのですが・・・。」


「マリカは理解できないわけはないと思う。19歳だろ?
いい関係が作れればいいと、私は思っているんだがな。」