翌朝、スウェルが庭で剣を振っていると、マリカがやってきた。


「マリカ・・・どうしてここに来たんだ?」


「あの、私の相手を頼んでもいいですか?」


「どうしたんだ?オーレンに稽古をつけてもらうのではなかったのかい?」


「それが・・・オーレアは魔法しか使わないから。
たぶん、苦手以外の理由で剣を自力で振り回せないのではないかと思うんだけど、言い出せなくて。」


「君は自力で剣を振り回したいと?」


「ええ、思い切り、振り下ろしたいの。」



「わかった、どこからでもかかっておいで。」



「たぁーーーー!!」


「弱い弱い、もっと踏み込んで!」



20分ほどすると、もうマリカは腕が上がらなくなっていた。


「はぁはぁ・・・あの・・・くっ。」


「今日はこれまでだな。
またあらためてな。」


「また教えてもらえるのですか?」


「ああ、いいよ。
俺もいい運動になる。」


「運動ですか・・・はぁ。」


「ごめん、失礼だった。」


「しょうがないですよ。
私は練習しても所詮、田舎の小娘なんだなって納得しちゃいました。
じゃ、私はこれで・・・。」


マリカは自分の行動や言動がはずかしくなってしまって、逃げ出してしまいたかったがスウェルにすぐに止められてしまった。



「また、来てほしいんだ。
君に嫌がられたり、避けられたりするのはつらくなる。」


「えっ?」


「ほんとは君の部屋にいてほしいと思ってる。
部屋もそのままにしてるから。

けど、皇太子妃殿下の補佐や病院の仕事を請け負ってたら、なかなか帰れない事情もあるのはわかってるよ。
オーレンの魔法に頼らなければならないこともね。

ときどきでもいいし、朝だけでもいい。
俺は、元気な君の顔が見たいから。」


「スウェルは私を奴隷扱いはしないってことですか?
まるで、仲間か友達みたいに・・・。」



「仲間?友達だって?・・・君は俺の心を揺さぶる女性だよ。
妹がわりでもないからね。
そりゃ、年齢はちょっとばかし、離れてるかもしれないけど・・・オーレンに負けるつもりはないから。」


「スウェル・・・(何だろう、このうれしい気持ち。私、スウェルに言ってほしかったんだわ。)
ありがと。
朝、都合が悪くない限り、毎日来ますね。」


「そうしてくれ。待ってる。」



マリカはうれしそうにオーレアの邸にもどっていった。