オーレアとスウェルの話をきいていたマリカは、ムッとした表情で言い放った。


「私は結婚する気なんて、まだありません。
まだ19なんだし、皇太子妃様が誘ってくださったお仕事をまずはきちんとやりとげなきゃって思っています。

でも、ハリィには会って元気になってもらいたいわ。
ハリィのところへは行かせてくれますよね、オーレア?」



「あ、ああ。君が元気なことを見せてあげるといいよ。
けど、それだけだ。
間違った魔法を習うと怖いってもうわかってるだろ?

ハリィにはもう習ってはいけない。
君は魔法の使い方を選ばなくてはならない人だからね。」


「はい。ハリィには友人として元気になってもらえればいいです。」


「わかった。じゃ、仕事が終わったらハリィへのお土産を用意して声をかけてくれ。」


「ええ。じゃ、スウェル・・・私は仕事があるので、これで・・・。」


「待ってくれ!待てよ、俺は朝には剣の練習をするのに待ってるし・・・。」


「剣の練習も僕が教えるよ。
スウェル、君は領主の仕事をしっかりするんだ。」



「オーレン、君だって、王宮にいるならそれだけ重要職なんじゃないのか?
マリカに本当の君の仕事を教えていないんじゃないか?
君は、魔法のスペシャリストであり指南役でありながら、大臣職だろ。
だったら俺よりも自由な時間はとれないはずだ。」


「そんなことはない。
僕は仕事をこなすのは早いから。
何のための魔力なんだと思う?

必要な仕事は難なくこなしているし、誰にも迷惑はかけていない。
それに僕は、ちっちゃな頃からマリカの存在を知っている。
ずっと・・・ずっと思っていたんだ。」


「オーレン・・・。そんな前のことをずっと覚えていたのか・・・。
(まいったな。いつも冷静でマイペースな彼がこんなに熱いやつだとは。)」


「スウェル、君がマリカを思う気持ちはわかるけど、マリカだけは・・・あきらめたくないんだ。
彼女が養女に出されたとき、とても悲しかった。
いくら、楽しく生きるためとはいっても、僕はいつでも会えなくなってしまったからね。

けど、今だからいうけど、僕は1つだけみんなに内緒でマリカに仕掛けた魔法がある。」



「仕掛けた?まだ子どもだったのに、何を仕掛けたんだ?」


「再び巡り合うことができたら、必ず僕から魔法を習うとね。」


「な、なんと!!」


「もちろん人の感情を魔法でどうにかするなんてできないことだけどね、けど、僕は願ったんだ。
彼女の深層心理に、僕という人間、いや、イメージでいい。
僕に接触することによって、魔法を高めたいと思う彼女であってほしいと。」



「さすがだな・・・オーレン。
そこまでマリカを思ってのことなら、俺は応援にまわるよ。
だがな・・・いつもの冷静な君の作戦ということだけなら、俺は君と刺し違えてもマリカを取り戻すからな。」


「ああ、そんなことは絶対ないから、安心してくれ。」