力強さとかわいらしさを併せ持ち、それでいて高貴なオーラを放っているアリシュレアは、間違いなく次の王妃だとマリカは思った。

面倒なことを他人任せにすることもできるのに、自分で何とかしようと考えている。

もう少し、部下を頼ってもいいのではないのかしら?と思うくらいだ。



「この王宮に入ってきてすぐに、私は攻撃を受けたの。
もう少しで、顔がズタズタになるところだった。

ちょっと油断しちゃったせいもあるけど、この国の魔法を扱えないメイドに爆弾を投げつけられたの。」


「そ、そんな!」


「幸い、そこにいるオーレンが気付いて、爆発に巻き込まれないようにしてくれたから、私は無事だった。
でも・・・オーレンが、オーレンの左手に酷いやけどが残ってしまって・・・。」


「えっ?失礼、診せてください。」


マリカはすぐにオーレアの左腕の袖をめくってみて、愕然とした。


「マリカ・・・強引だなぁ。」


「すみません、でも、こんなひどい傷。
痛かったでしょう?
いくら回復魔法でも痛み止めの薬と眠ることを併用しながらでないと、これは耐えられない。」


「耐えたからもう、大丈夫だよ。
それに僕も火薬の知識を学んで、今は爆弾や銃についてはプロになった。
しかし、正直・・・寒い日はまだ痛むこともあるんだ。
じつは、マリカにこの傷跡に効く薬はないかと相談したいとも思ってた。」


「それを早く言ってください!
こんなひどいこと・・・。」


「マリカ、そ、そんな涙を浮かべて悲しんでくれなくてもいいんだ。
僕の腕のことなんだし。

だけど・・・自惚れかもしれないけど、僕の腕の痛みのことでそんなに考えてくれて、ありがとう。
すごく、うれしいな。」



「オーレンと仲良しさんになってくれたことでもあるし、マリカは私の家族の御傍仕えをしてください。
仕事はメイドみたいなものから、事務職の補佐、けが人の世話、病院とのやりとりなど・・・たくさんあるから覚悟しておいて。

女性だから手伝ってほしいことは山ほどあるのよ。
オーレンもいろいろ手伝ってくれるけれど、彼は男だから主人やお義父様のこと、国民とのやりとりなど、忙しいわ。
まぁ、あなたに出会って少しさぼっているようだけど・・・。」


「えっ?私のせいで、お仕事が止まってるの?」


「いえ、大丈夫です。
今、緊急の仕事はございませんから、ご安心ください。
それに、マリカは僕の・・・想い人だから。」


「えぇええ!だって、ちっちゃかったのに。
冗談じゃないの?」


「まさか、僕が真剣に話したことを嘘だと思ったのかい?
僕は、絶対に君を妻にするつもりだから。

アリシュレア様のもとで働いても、仕事以外の時間はすべて僕といてもらうつもりだからね。」



「まぁまぁ・・・いきなりすごいセリフね。
マリカ、これからあなたのお部屋へ案内させますから、確認したら仕事着に着替えて私のところまできてください。
今日やってほしい仕事を早速お願いしたいの。

それと、オーレンの左腕もせめて痛みをとりのぞきたいの。
お願いできるかしら?」


「はい、もちろん。
すぐには難しいかもしれませんが、痛みは早く取り除いて差し上げます。」


そして、成り行きに従って、マリカは王宮の使用人部屋に住むことになってしまった。