オーレンがあまりに真剣に話をするので、マリカは反論もできなかった。

しかも、スウェルは愛人という噂をふれてまわることでマリカを奴隷にしないようにしたが、オーレンは即答でマリカを嫁にして守ると言ってくれているのだ。


「あの、あなたは私を妻にして本当に困らないのですか?」


「僕は困らないが?君は困るのかい?」


「だって私はあなたのことを全然知らないわけだし、知らない相手といきなり結婚なんて私・・・。」


「ふふっ、かわいい人ですね。
僕はもうあなたのことはかなりわかりました。

スウェルとナギンと王宮にある君の家についての資料・・・そしてライダルや市場の人たちの証言など、わかる情報の処理は終わりました。」


「うそぉ!!でも、そこにあなたの・・・あなたの気持ちは?
私なんて好きじゃないでしょう?」



「好きだといったら?」


「うそです!!あなたほどの天才魔導士様が私のような奴隷同様の小娘相手に、そのようなことをいって・・・あとで後悔しちゃいますよ。」



「後悔などするわけがない。
一目ぼれをつらぬいて、まさかの再開だ。」


「えっ?」


「僕はナギンが君を妻のタリナに預け、タリナは命がけでシューカウリの弟一家に君を預けた。
僕はそのときはまだ11歳だったが・・・魔法のうまさをかわれてタリナの護衛についていた。」


「ちょ、ちょっと待って・・・スウェルのお師匠ですよね・・・で、その11歳のときって私はいくつだったの?」


「3才だったかな?
僕は現在27だと思うけど・・・」


「うそぉ・・・だってスウェルは28なのよ。
師匠の方が年下なの?」


「そういうこともあるかもしれない。ははっ
当時の愛くるしいほどのきれいでチャーミングな女の子が、こんなにきれいになって・・・感動してるよ。」



「そ、そうなの・・・。なんか変な感じね。
勝手に過去を語られて、そうなの?って言ってる私なんて。」


「だから君とは初対面ではないということ。
あ、そうそう、君には本名を呼んでほしいな。

オーレア・レドラスっていうんだ。
商売上はオーレン・レイ・オーナだけどね。
まぁ、愛称はオーレでいいけど。」


「魔導士ってそういう軽い人が多いの?」



「軽いかな?この外見でも?」


「まぁ・・・真っ黒っていうのは、重いかも。
だけど、結婚は無茶すぎるわ。
愛人っていわれるのもつらいけど、考える時間くらいないと・・・。」



「考えるねぇ・・・僕はすぐにでも結婚して、初夜を迎えたいんだけどなぁ。
でも、奥さんを困らせるつもりはない。
もう黄泉の国になんか跳ばせやしない。
君の教育くらい僕が引き受ける。

化け物退治も僕がする。
君を絶対守るよ。」