剣は幾度も、カチーンと音をならして、両者ともはじきあいをしていた。


「くっ、細いわりに力があるんだわ・・・。手がしびれてきた。」


「どうしたんだ?そろそろ手がしびれてきたのかな?」


「うるさいぃぃ!!」


「ふふっ、そうこなくってはな。」


「負けるもんかぁーーー!」


マリカが力を振り絞って剣を振り上げた途端、男は剣を持ってない左手で指をはじく動作をすると、マリカは剣を地面に落としてしまった。


「お、おまえは・・・魔法騎士なのか!
手の自由が、きかない。」


「まぁ、そんなとこだな。どちらにせよ、おまえはここで騒ぎを起こした。
領主の権限で確保する。
で、暴れてもらっては困るから・・・少し眠っていてもらおうか。」


「卑怯だぞ!私は・・・!私は市場の奥さんたちを・・・守りたく・・・て・・・あっ・・・。」


「力の限界ってとこだな。
もう私の剣を止めるだけの力がなかったということなのか?
(先に私の出した一撃は、止められたのに。
まぁいい、これからかわいいお嬢さんと好きなだけいられるな。)」



新しい領主は邸に到着するなり、ライダルに出会った。
そして、ライダルは眠ったまま連れられたマリカを見てしまう。


「マ、マリカっ!どういうことですか?
マリカが・・・うちの娘が何をやったというのです?」


「ほぉ、この娘はおまえの娘なのか?」


「はい、実の娘ではありませんが、戦争で家族をなくしていて私がお育てしているんです。」


「お育て・・・ねぇ。」


ライダルの目の前で左手の人差指をスッと振ると、ライダルはまるで催眠術にかかったようになり、領主は質問し始めた。

「おまえは何者だ?正直にいえば命は助けてやろう。」


「私は、シューカウリの騎士でライダル。
お嬢様は私の主人であったレック様の末のご息女です。
もともとこの邸で騎士の娘として、何不自由なく明るく過ごしておいででした。」


「ほぉ、この邸の主の娘か。
で、この邸の家族はどうしてるのだ。」


「父君と兄2人は戦死、姉2人は農家に逃げ延び、今は農家にそのまま嫁がれてお子さんをもうけていらっしゃいます。
しかし、末娘のマリカ様はこの邸を取り返すため、日々精進して剣を練習しております。」


「なるほどね・・・で、マリカは魔法を使えるのか?」


「いや、使えないはずです。我々は魔法を使えない人間ですから。
しかし、マリカは小さい頃から医術には長けておりまして、薬草摘みから、薬の煎じ方、人の病の治し方など、本人も興味があるようで、どんどん吸収しておりました。
肌にいい化粧水まで自分で作り出し、女性にも喜ばれていて、現在は収益として販売もしてくれていました。」


「そうか・・・。努力家なのだな。」