マリカは驚いていた。
いくらマリカの邸を使って、シューカウリの国を立て直すことに利用するといっても、この物言いって・・・まるで恋人に話すようなことじゃない?と頭をよぎった。



「マリカはスウェルの愛人なんだからな。」


「えっ?愛人・・・。」


スウェルの横にいたカナビスがはっきりと言った。


「どうして、私がスウェルの愛人なの?」



「じゃ、奴隷の方がいいのかい?
君は敵国の騎士の娘だ。表向きはね。
いくらナギンの実の娘だといっても、世間はまだそうは見てくれない。

君が自由に外に出て普通に生活するためには、スウェルの愛人という位置にいるのがいちばん安全なことなんだ。
魔法を習うこともそうだ。
奴隷じゃ、ものを習うことなどできないし、下働きだけで終わってしまう。

君はそんなことだけで終わっていい人じゃない。
今は、学んでいずれ、皆の役に立つ人間であることを示すんだ。
まぁ、私ならすぐにおまえを嫁さんにしてもいいと思っているけどな。」



「えっ・・・だってカナビスから見れば私なんて子どもでしょ。」


「あのなぁ、君は19で私は30、スウェルは28で私と2つしか差はないんだぞ。
結婚するなら立場的に力がある相手に嫁ぐのが理想的だろう?」


「私は立場がどうの・・・ってお話はわからないわ。
お兄様たちに剣を教わることでいっぱいだったから。」


「これだよ・・・敵兵の妹だからって憎めないかわいさだよね。
スウェル。
まぁ、スウェルはリオレバ勝利の立役者でもあるし、リオレバ王のお気に入りだから、いずれ素敵な姫君を娶ることになるだろうがね。

私は君のいう剣と技とで地道に生きて行かなきゃいけない騎士だからね。」


「ああ、そういうことですか・・・。
でも、私まだ、そういうことは考えてなくて。
いずれは考えなくてはならないんでしょうけど、今は勉強することに必死なので。」


「マリカ・・・会って間もない時もいったと思うけど、俺はもともと農民の子だ。
騎士の魔術を勉強して、たまたま戦った相手に恵まれただけなんだ。

もし、俺たちが負けていたら、君はナギンに会う必要もなかっただろうし、騎士の家柄の娘で大切に育てられていたに違いない。

だけど、現実は今、こうやって集まってしゃべってることが現実だ。
今は、俺の愛人などと呼ばれるが、我慢してほしい。
俺は君が不幸になることは望んでいないんだから・・・それだけは信じてくれ。」



「あ・・・もう気を遣わないでください。
いずれ私は習うことを習得したら、ここを出ていきますから。

ライダルのことも心配だし、ナギンお父様とハリィといっしょに居た方が私は・・・」


「それはだめだ。」