一方、マリカを連れ去った男はナルカラムの町を出て、隣町のラドランに入っていた。

そして、ある邸のベッドにマリカを寝かせて、自分も隣に添い寝するとそのまま寝入ってしまった。



翌朝、朝の光に思い瞼をあけたマリカはふと横を見て叫び声をあげた。


「きゃぁ!!!誰、あんた誰!どうして・・・私・・・ここはどこなのよ。」


「うるさいなぁ・・・朝から耳元で怒鳴るなよ。
よぉ、おはよう。」


「私・・・あなた私をさらってきたのね。
何者なの?私をどうする気?
殺すの?それとも誰かと交換するの?」


「ふぅ~ん・・・意外に勝気な女の子なんだ。
でも、見た目はおとなしそうでかわいい。
それに、胸もお尻も柔らかくて最高!」


「きゃあ!!!な、何すんのよ!」



男にいきなり胸やお尻を触られてあっけにとられながらも、そそくさとベッドの外へ出て部屋からも出ようとマリカはドアへと向かうが、男はいち早くドアの前に立っていた。


「君は俺には勝てないさ。
俺はハリッシュ・クレラッド。
こんなことくらい簡単なんだよ。」


そう言ってすぐにマリカの唇に自分の唇をあわせてきた。


「うっ・・・いやっ・・・やめ・・・」


「あきらめろよ。俺には勝てない。
君は俺のモノになるんだ。」


「やだ・・・誰があんたみたいな得体のしれないヤツに・・・。」


「もう君は俺の術にはまってるんだよ。ワン、ツーのスリーっと。」


マリカの瞳からきらびやかな光が消え、目は開いているものの人形のような目と変化していた。

そして、言葉も消えた。


「かわいそうだけど、これが魔法を使える者と使えない者の違いなんだよ。
できれば、意識がある状態で愛し合いたかったけど仕方ない。
優しくはしてあげるからね。」


そういって魔法を使ってマリカの下着を脱がせようとしたときだった。


「やだ・・・いや・・・あんたなんか・・・あんたなんか消えちゃえ!!!」


「な、何?!!」


マリカの意識のないはずの瞳から大量の涙がこぼれ、その後、人形のような目にギラギラした邪悪な炎が燃えていた。
そしていつのまにか、ハリッシュの枕から煙が上がり始めた。


「うわぁ!!!な、なんだ?
ちょっとぉ、ちょいまち!君、やめるんだ。
マリカ、起きるんだ。」


パチン!!
ハリッシュがあわてて自分のかけた魔法を解くと、マリカはワァーーーと泣き出した。


「ひどいわ、私を、いきなり暗闇に閉じ込めてしまうなんて・・・。」


「暗闇に閉じ込める?俺はそんなことはしていないが・・・。
もしや・・・これは・・・非常用の・・・やっぱり君はナギンの娘なんだね。」


「ナギン?もしかして、私の本当のお父様っていう人?」


「ああ、俺はナギンから娘を捜してほしいと頼まれたんだ。
彼は戦争がもとで、足が不自由になってしまった。
日常生活には魔法が使えるからさほど困らないけれど、娘を捜すとなると、旅をしなければならないからねぇ。」



「それでその旅をするごとに、女性を抱いてるってこと?
けがらわしいわ!!」