マリカとスウェルとカナビスの3人で部屋を見てまわる。

邸の中でまず目に留まるのが、風景画の数々だ。

かなり大きなキャンバスに、田園風景やその合間に建つ古い建造物、寺院そして・・・


「これだけ人物画だね・・・なんか見たことがあるような・・・。」


「カナビス、この人のことを知っているの?」


「いや、でもどっかで・・・見たような。」


「思い出してよ!」


「この方はナギン・リュラ・サーガロス。
リオレバに療養しにきていた魔道騎士だ。」


「スウェルはこの人を知ってるのね。
この方っていうんだから、偉い人なのね。」


「いや、素性は俺もよく知らないんだ。
けど、俺がオーレンの弟子になることを勧めてくれて、オーレンに頼んでくれたんだ。
で、彼は君とどういう関係?」


「この人は・・・私の本当のお父様かもしれないの。」


「えっ!!!そっか、君が回復魔法を操れるのは・・・そうか、そういうことか。」



「魔法で親子がわかるの?」


「実際のところはわからないけど、ナギンが君のお父さんだったら君が回復魔法を使うのは当然なんだ。
彼は魔道騎士とはいいながら、たくさんのけが人の面倒をみていた人だったんだ。

たしか・・・君と同じように薬草を選んで、そこに魔法をかけてけがを治療してた。
そして彼は攻撃魔法は使いたくないって口癖のように言ってたよ。」


「そうなんだ・・・。
なんかとてもわかる気がする。
私は養女なんだというのは、エリード家の父と母からきいて知っていたの。

でも、ほんとの妹として接してくれたし、私がけがを治すのも気味悪がったりしなくていっぱいよろこんでくれてとてもうれしかったの。
だけど・・・ナビアお兄ちゃんが・・・。」


「兄さんがどうかしたのか?」


「兄さんは君のことが好きになったんだね。」


「あ・・・そうなの。
でも、私はナビアお兄ちゃんとキシルお兄ちゃんは大好きだったから、お嫁さんになってもいいってそのときは思ってたの。
だけど私は幼なすぎて・・・何もわかってなくて。」


「お姉さんたちは反対だったんだね。」


「どうしてスウェルは何でもわかってるの?」


「まぁ、その手の話の結末は・・・ねぇ。
うまくいかないものなんじゃないかってね。」


「ナビアお兄ちゃんは長男だから財産とか、後継ぎとか難しいって。
最近になって私も、簡単なものじゃなかったって少しだけどわかってきたけど。
もう、お兄ちゃんたちはこの世にもいないんだと思ったら・・・思い出せなくなっちゃって。」


「お姉さんたちの部屋を見せてくれるかい?
ちょっと気分をかえようか。」


「そうね。気を遣わせちゃってごめんなさい。
お姉ちゃんたちの部屋は飾り物でいっぱいだったんだけど、今はかなりはがされちゃってずいぶん違っちゃったわ。」


「でもさすがに、ここは女性の部屋だったってことはすぐにわかるね。
においでわかっちゃうよ。
ははは・・・・は・・・」


笑いながらカナビスは窓に向かって小刀を投げた。


「やべっ!」