パッとその場が明るくなるような笑顔にカナビスは不思議な気持ちを憶える。


「なぜ、そんなうれしそうなんだ?」


「だって、剣を教えてくれるんでしょう?
あなたは強いし、私にとってはいい師匠になってくれそうだもの。」


「ふう。仕方ないな・・・スウェルが見たら悔しがるだろうなぁ。」


「どったことないって。
私は奴隷にちょっと毛がはえただけの、家の案内役なだけだもの。
それに、私とは世界が違う人だしね。
回復魔法が便利な使用人ですから。」


「そうかな?
そんなに自分を卑下しなくてもいいと思うが・・・」


「それにまだ剣を交えて少しの時間だけど、あなたの方が私、強くなれそうな気がするの。」


「それは光栄ですね。じゃ、少しだけ本気でいってみましょうか。」


「す、すごい!ちょっとだけ本気っていいながら、繊細で速い動き。」


「そんなに気に入ってもらえましたか?(私も気に入りましたけどね。)」


カナビスとマリカが楽しく話していると、聞き慣れた声が明らかに怒ってとんできた。



「朝の練習はここではなかったはずだ。
練習相手もどうしてカナビスになっているのかな?」


「カナビスの方が私に教えてくれるのが上手だからよ。
戦いながら、催眠術をかけられてわからないうちに乱暴でもされたら大変ですもの。」


「俺は魔法など使わなくても、余裕で君に勝つ自身はあるんだけどね。
そうだ・・・早速練習の成果を見せてもらおうかな。」


「えっ・・・。」


「俺の前にたつのも恐ろしいのかな?」


「わかったわ。受けてたつわ。」


「ちょ、スウェル・・・それは、あまりに大人げないんじゃないのか?」


「いいの、カナビスは何も言わないで。
私のために仕事がなくなったりしたら困るでしょう。」



「余裕なこと言ってるじゃないか。
ただ戦うだけじゃ、意味がない。
君が勝ったら、もしくは、俺に小さくても傷をつけることができたなら、カナビスでもライダルでも、好きな相手に練習を頼めばいい。
だが、俺が勝ったら、俺の言うことをきいてもらおうか。」


「ぎく・・・っ。わかりました。」


カナビスが審判となり、マリカとスウェルは真剣勝負を始めた。


「はぁーーー!」

カチーン!カーーン!カン!カン!カチーーーッ!


マリカはスウェルの攻撃を受けながら、少し疑問が浮かんできた。


(この人・・・楽しんでるの。なんでこんな消耗戦みたいなこと・・・するの。)


「うっ、1つでも傷をつけなきゃ!
だけど・・・手がしびれてる。」


(そろそろいい頃合いだな。)


「いくぞ!フン!!」


「こんなものぉ!!」


ガチーーーン!!


(あっ・・・っ・・・)


しびれた手から剣が地面に落ちていく。

マリカはあわてて剣が地面に落ちる前に取ろうとするが、その隙に、スウェルの剣先がマリカの喉元に突き付けられた



「あっ・・・だめ・・・目の前が白くなっちゃう!」


マリカはそのまま気を失って、倒れるときにスウェルの剣先によって喉に傷を負ってしまった。


「おぃ、ま、マリカァアアア!」