翌朝、マリカはスウェルと剣の稽古をするのをためらっていた。


(なんか言われるままに、剣の稽古までつけられるのは悔しい・・・所詮あいつは敵なのに。)


いろいろ迷った挙句に、マリカはスウェルと約束していたバラ園ではなく、東門近くのゴミ捨て場の前で剣の自主練習をしていた。


「うん、あとはライダルが来た時に稽古をつけてもらえばいいわね。
最後は魔法のインチキ剣なんて、私が習いたい剣ではないわ。」


「じゃあ、どんな剣ならお好みなのかな?」


「あ・・・あなたは・・・。(やべっ・・・こ、こいつはスウェルの側近の・・・えっと。)」


「カナビスだ。カナビス・ジャームという。
マリカはこの時間はスウェルと剣の稽古ではなかったかな?」


「それは勝手にスウェルが決めただけよ。
それとも、スウェルの言うことをきかなかったら、私はここであなたに殺されても文句は言えないのかしら。」


「よくわかってるじゃないか。」


「えっ!!」


「敗者は勝者には勝てない。
おまえの邸であっても、おまえはもう自由に邸の中を歩き回れるわけもなく・・・それをせっかくスウェルは自分の友人扱いまでして、譲歩してくれているというのに・・・バカな女だ。」


「そうよ、バカな女ならここで死んでも文句はないでしょ。
私だって・・・ここでお父様やお兄様たちといっしょに神様のもとへ行けるなら・・・さよなら。」


「ま、待てよ!そんなに死をあせってはいけな・・・」


「ばっかじゃないの!!
ここで死ぬわけないじゃん。
あんたの首の骨でも折って、お土産にするわ。」


マリカはカナビスの首に剣を向け、威勢よく叫んだ。


「じゃ、お土産にしてもらおうか・・・。ふふふっ」


「きゃあ!い、いやぁ!!離して、離せってば。」


カナビスに向けたはずの剣先は、あっという間に力でマリカの頬の前までせまっていた。


マリカはいちかばちかで、もう1本の短剣で服の帯を切り落とし、下半身が下着姿になりながらカナビスの隙をついた。


「はっ・・・こ、この娘は!」


「見たなぁ!このチカンめぇ。」
と叫びながら、太ももをあらわにした足で、カナビスの腹部に蹴りをいれた。


「うっ・・・。くそ、油断したか。うっ・・・。」


「あっ・・・大丈夫?ごめんなさい・・・スウェルの側近のお腹に蹴りいれるだなんて・・・私。
すぐ、痛みだけでもとるから・・・じっとしてて。」


「えっ・・・これは・・・回復魔法か?」


「それと、この葉っぱをしがんで、汁を飲んで。
きっとお腹の痛みが楽になるわ。」


「おぃ、どうして・・・おまえは私にこんなことをする?」


「だって、あなたは本気になれば私なんて一瞬で簡単に殺せたのでしょう?
たぶん、スウェルと同じような憐れみを私にかけたんですよね。

それとも私と暇つぶし?」



「は、うはははは。読まれていたとはな。
それに剣の練習台なら、私がしてやってもいいかと思ったんだ。」


「それ、ほんと?ほんとに相手になってくれるの?」