マリカ・エリードは先祖代々騎士の称号を持っている誇り高い家庭に育った。

しかし、隣国ターニブリが滅び、すぐにたくさん戦闘のためにやってきたリオレバの軍に歯が立つわけもなく・・・シューカウリもあっという間に滅んでしまったため、マリカの家族は父と兄2人は戦死、母は精神を病み病死し、姉2人は農家へと疎開し、そこで暮らすうちに農家の嫁としてひっそりとした生活を送っていた。

ただ、マリカだけは末娘で小さかったため、父の側近であったライダル・テビアスに引き取られ、現在は表向きは鍛冶屋の主人ライダルの娘として暮らし、裏では剣の修業をして暮らしていた。



「はぁっ!たぁーーーー!」



「こんなものか?力が足りないぞ。
もっと踏み込め!」


「くっ!踏み込めって・・・手の感覚がもうないのに・・・。」


「弱音を吐くのが早いぞ!」


「ううっ・・・えぇーーい!!きゃあ!!」


マリカが床に倒れると、手から血が流れていた。


「うーむ・・・女の子にとってはこれが限界なのか・・・。」


「そんなことない、私の努力が足りないだけ・・・大丈夫だよ。
こんな傷くらい自分で治せるし、すぐにまた教えて。」



「マリカ様・・・もう今夜はやめておきましょう。
いくら傷を治すことができても、攻撃力が少ないのは致命的です。
外では剣を使ってはなりませんよ。」


「わかったわよ。私の剣じゃ、ダメダメなのはわかってる。
それでも、男に好き勝手されてゴミのように捨てられる女の子の力になってあげたいの。

シューカウリの民のくせに、力で女にひどいことをする輩くらいは撃退したくなるのよ。
だから、早く強くならなきゃ。」


「何とかマリカ様にあった戦術をと考えてはいるのですが・・・どうしたものやら。
あ、そうそう、明日この町に新しい領主様が到着されるそうです。」


「新しい領主って・・・リオレバの兵士?」


「そうみたいです。
リオレバを勝利に導いたという噂のある、凄腕の騎士らしいですがね。
まだ、姿を見た人はこの近くではいないので、どんな人物で、年がいくつなのかもわかりません。」


「そうなんだ・・・でもそんなすごい騎士様が、どうしてこんな田舎の領主になるのかしら?」


「さぁ、理由はわかりませんが、明日になればわかるでしょう。
挨拶されるそうなので。
もし、このへんにやってきたとしても、鍛冶屋の娘としての振る舞いを心がけてくださいね。
剣をふるって戦おうなんてやっちゃいけませんよ。」


「わかってるわよ。相手はリオレバ屈指の使い手なのでしょう・・・私には勝てっこないなら、やることはわかってるわ。地味な町娘に徹するわよ。」